ゴミ屋敷における害虫・害獣被害の中で、最も生命と財産を脅かす直接的な恐怖は、ネズミなどの害獣による「電気火災」のリスクです。ゴミが堆積した空間では、ネズミにとって外敵から身を隠し、巣を作るための材料が無限に存在します。ネズミには、一生伸び続ける門歯を削るために硬いものをかじるという習性がありますが、ゴミ屋敷の暗がりに這わされた家電製品のコードや、壁内部の電気配線は、彼らにとって格好の「かじり木」となってしまいます。配線の絶縁被覆が剥き出しになれば、そこから漏電が発生し、周囲に積み上げられた古紙やプラスチック、衣類といった大量の可燃物に引火するのは時間の問題です。ゴミ屋敷における火災は、通常の住宅火災とは比較にならないほど激しく燃え広がります。可燃物が隙間なく敷き詰められているため、火は瞬く間に部屋全体を飲み込み、フラッシュオーバー(爆発的な延焼)を引き起こします。さらに恐ろしいのは、ゴミが避難経路を完全に塞いでいるため、中にいる住人が逃げ遅れるだけでなく、救助に入る消防隊員も中に入ることができず、生存の可能性を著しく下げてしまうことです。ネズミの存在を示す「ラットサイン(糞や尿の跡)」がゴミの山に見られる場合、それはいつ発火してもおかしくない時限爆弾が仕掛けられているのと同じだと認識すべきです。また、害虫の死骸や糞がコンセントの内部に溜まることで、トラッキング現象(湿気を吸った埃などを通じて電流が流れ、発火する現象)が発生するリスクも飛躍的に高まります。ゴミ屋敷における衛生被害は、単に病気になるだけでなく、一瞬にしてすべてを灰にする物理的な破壊の種を孕んでいるのです。害獣による火災を防ぐには、物理的にネズミを駆除すると同時に、電源コードを保護管で覆い、何よりもネズミの隠れ場所となっているゴミを撤去するしかありません。ゴミ屋敷の解消は、不潔な環境の改善という以上に、地域全体を火災の脅威から守るための緊急の防災対策なのです。害虫・害獣という小さな存在が、ゴミ屋敷という環境と結びついたとき、それは都市部における巨大な爆薬へと姿を変えるという事実を、私たちは重く受け止めなければなりません。