「子供部屋おじさん」という言葉がネット上で人口に膾炙して久しいですが、この現象が進行した結果として、現在、深刻なゴミ屋敷問題が引き起こされています。実家の子供部屋に長年住み続け、中高年になった未婚の男性が、親の死や入院をきっかけに、部屋だけでなく家全体をゴミ屋敷にしてしまうケースが激増しているのです。親が健在なうちは、最低限の清掃が行き届いていたとしても、その庇護を失った瞬間に、片付けの習慣が全くない本人の無気力が表面化します。親が残した大量の遺品と、本人が溜め込んだ趣味の品々が合体し、手に負えない規模のゴミ屋敷へと変貌するのです。このケースの厄介な点は、本人が社会から完全にドロップアウトしていることが多く、行政の福祉サービスとも繋がっていない点にあります。自室という狭い空間での万能感に浸っていた本人が、現実の壁(ゴミの山)に直面したとき、それは激しい自己嫌悪と外部への攻撃性へと転じることがあります。近隣住民からすれば、いきなり家が荒れ始め、そこに気難しい中高年男性が住んでいるという状況は、多大な不安と恐怖を招きます。また、建物の老朽化が進んでいることも多く、ゴミの重みで床が抜けたり、火災が発生したりするリスクも高まります。この問題の解決には、まず本人の自立支援という高いハードルを越えなければなりません。しかし、ゴミ屋敷を物理的に片付けることが、本人に「現実を直視させる」ための強力なショック療法となることもあります。専門の業者が一気に家を清掃し、まっさらな空間を取り戻すことで、本人が自分のこれまでの人生とこれからの生活を問い直すきっかけになるのです。高齢の親と同居している四十代や五十代の独身者は、自分の親がいつまでも元気ではないという冷厳な事実を直視し、今のうちに親と一緒に「生前整理」を進めるべきです。それは親の遺品を片付ける練習であると同時に、自分がゴミ屋敷の住人にならないための、最も有効な予防策となるからです。子供部屋おじさんという言葉の裏には、こうした世代交代の失敗によるゴミ屋敷化の悲劇が潜んでおり、それを個人の問題で終わらせず、社会全体で受け皿を考えていく必要があります。