住空間の心理学を専門とする学者の視点から見ると、汚部屋の片付けにかかる時間というのは、単なる物理的な距離の問題ではなく、住人の「時間感覚」の歪みを補正するためのプロセスである。汚部屋に陥る人の多くは、現在・過去・未来という時間の連続性が断絶しており、目の前の快楽や苦痛の回避にのみ集中してしまう傾向がある。その結果、ゴミを出さないという未来のメリットよりも、今すぐゴミを放置するという目先の楽さを選んでしまう。片付けに時間がかかるのは、溜まったゴミを捨てるだけでなく、そうした歪んだ時間感覚を現実に引き戻す作業が必要だからである。専門家が推奨するのは、片付けの過程を数値化し、可視化することだ。例えば、今日は一時間でゴミ袋三つ分を処理した、という実績をカレンダーに記録する。これにより、自分の行動がどれだけの時間でどのような結果を生むのかという因果関係が明確になり、時間感覚が正常化されていく。また、汚部屋の状態では、何がどこにあるか把握できないため、脳内での情報処理に余計な時間がかかっている。これが慢性的な決断の遅れや疲労感につながる。片付けによって視覚的な情報が整理されると、脳のワーキングメモリが解放され、日常生活のあらゆる場面での判断スピードが向上する。つまり、片付けに要した時間は、その後の人生における知的生産性の向上によって、何倍にもなって返ってくるのである。このように、汚部屋の片付けと時間は密接不可分な関係にある。単に部屋を綺麗にするという物理的な目的を超えて、自分の人生の時間をどのように管理し、どのように生きたいかを再考する機会として、この時間を捉えることが重要である。専門家の介入が必要なレベルの汚部屋であっても、時間の使い方を一歩ずつ変えていくことで、必ず出口は見えてくる。焦らず、しかし着実に、自分の中に流れる時間を整えていくことが、真の意味での汚部屋脱出となるのである。