ゴミ屋敷をそのまま、あるいは片付けた後に売却しようとする名義人には、通常の不動産売却よりも遥かに厳しい「告知義務」と「瑕疵担保責任(契約不適合責任)」が課せられています。不動産の売買において、名義人は買い手に対して、物件に関する重要な事実を全て伝える義務があります。たとえ、ゴミを完全に撤去して一見綺麗になったとしても、そこがかつて凄惨なゴミ屋敷であったことや、強烈な悪臭が壁紙や下地にまで染み付いていたこと、害虫の発生が周辺にまで及んでいたことなどは、買い手の意思決定を左右する重要な情報なのです。これらを隠して売却し、引き渡し後に買い手が気づいた場合、名義人は契約解除や多額の損害賠償、あるいは代金減額請求を受けることになります。特にゴミ屋敷の場合、清掃後も「見えない瑕疵」が残ることが多いのが特徴です。例えば、放置されたゴミの重みで床の構造材が歪んでいたり、腐敗した汁がコンクリートに浸透して季節によって臭いが再発したりといった問題です。名義人は、これらについて「知らなかった」では済まされません。売主としての責任は名義という権利に基づいて厳格に問われます。また、現状有姿(ゴミがあるままの状態)で売却する場合、買い手は当然、高額な清掃費用や解体費用を差し引いた、二束三文の価格を提示してきます。この際も、名義人は近隣住民とのこれまでのトラブルの経緯などを正直に話さなければ、引き渡し後に買い手と近隣住民の間でトラブルが発生した際、その火の粉は再び名義人へと降りかかります。売却して名義を手放せば全てが終わると考えるのは甘いと言わざるを得ません。名義人としての最後の仕事は、その家の「不都合な真実」を全て白日の下に晒し、納得の上で新しい所有者に引き継ぐことです。ゴミ屋敷を売るということは、物理的なゴミを片付けること以上に、これまで名義という名の下に蓄積された「負の情報」を清算することなのです。
ゴミ屋敷の売却で名義人が直面する法的義務