一つの土地や建物に対して複数の名義人が存在する「共有名義」の不動産がゴミ屋敷化してしまった時、そこには法的な迷宮と人間関係の崩壊が待ち受けています。例えば、親から相続した実家を兄弟三人で均等に名義を持っているケースを想像してください。そのうちの一人が実家に住み続け、セルフネグレクトの末に家をゴミで埋め尽くしてしまった場合、残りの二人の名義人は地獄のような状況に立たされます。共有物に対する保存行為は各共有者が単独で行うことができますが、ゴミの撤去や大規模な清掃、ましてや建物の解体といった「変更」や「管理」にあたる行為には、共有者の過半数や全員の同意が必要となるため、居住している当人が拒絶すれば、他の名義人は手出しができないという袋小路に陥るのです。一方で、行政や近隣住民からの苦情の矛先は、名義人全員に向けられます。自治体から送られてくる是正勧告の通知書には、共有名義人全員の名前が記されており、誰か一人が代表して責任を取れば済むという話ではありません。もし、ゴミが原因で公衆衛生上の著しい被害が生じた場合、行政代執行の費用請求も、名義人の持分に応じて、あるいは連帯して請求される可能性があります。共有名義という仕組みは、平時には資産を分け合う便利な形ですが、有事の際、特にゴミ屋敷問題においては、お互いに責任を押し付け合う、あるいは共倒れを招く恐ろしい罠へと変貌します。片付けたいと願う名義人と、捨てたくないと執着する居住名義人の間での裁判沙汰に発展することも珍しくありません。また、共有名義のままでは不動産を売却して清算することも不可能です。ゴミ屋敷を更地にするためには全員の同意が必要であり、一人が認知症などで判断能力を失っていれば、さらに成年後見人の選任が必要になるなど、手続きのハードルは際限なく高くなっていきます。このように、名義が分散しているゴミ屋敷は、物理的なゴミの量以上に、法的なしがらみの壁が厚く立ちはだかります。共有名義という不安定な権利関係を放置し続けることは、結果としてゴミの山を次世代にまで引き継がせることを意味します。早い段階で名義を一本化するか、あるいは全員の合意のもとに専門業者を介入させ、物理的なゴミと法的な不毛な争いの両方を清算することが、唯一の出口となるのです。
共有名義の不動産がゴミ屋敷化した時の地獄