認知症や精神障害などにより、不動産の名義人本人が判断能力を失い、その自宅がゴミ屋敷化してしまった場合、法的な解決策として期待されるのが成年後見制度です。しかし、実際に後見人が選任されたとしても、ゴミ屋敷の解決がスムーズに進むとは限りません。後見人の主な役割は「財産の管理」と「身上保護」ですが、ゴミ屋敷を片付けるという行為は、本人の「所有権」や「執着心」と真っ向から衝突するからです。たとえ周囲がゴミと呼ぶものであっても、本人がそれを財産だと主張している限り、後見人が勝手に処分することは、本人の権利侵害にあたる可能性があるという法的なジレンマが生じます。特に不動産の名義人本人がそのゴミに囲まれて暮らすことを強く望んでいる場合、後見人は家庭裁判所の許可を得たり、慎重な調整を行ったりしなければならず、迅速な対応が困難なのが現実です。また、後見人がつくことで、名義人の財産から清掃費用を出すことができるようになりますが、もし本人の預貯金が乏しい場合、その費用を誰が負担するのかという問題が再燃します。後見人自身が立て替える義務はないため、結局は親族が負担するか、あるいは行政代執行を待つしかないという状況に陥ります。このように、名義人に代わって法的な判断を行う人間が現れたとしても、ゴミ屋敷問題の根底にある「物の処分の難しさ」は解消されません。むしろ、手続きの厳格さが増すことで、専門業者の介入が遅れることさえあります。一方で、名義人が既に施設に入所し、空き家となったゴミ屋敷を処分する場合、後見人は「居住用不動産の処分」として家庭裁判所の許可を得る必要があり、このプロセスの間にさらに建物の老朽化が進んでいきます。成年後見制度は名義人の権利を守るためのものですが、ゴミ屋敷問題においては、その権利の守り方が、結果として周囲の生活環境を犠牲にしてしまうという皮肉な構造を生んでいます。ゴミ屋敷の名義人が判断能力を失う前に、家族信託などの生前対策を講じ、管理権限をより柔軟に動かせる形にしておくことの重要性が、近年の現場では強く叫ばれています。
成年後見制度とゴミ屋敷の名義人保護の現実