賃貸マンションやアパートの一室がゴミ屋敷化してしまった際、契約の名義人が誰であるかという問題は、退去時の賠償額を決定づける極めて重大な要素となります。最も多いトラブルは、実際に住んでいる人間と契約上の名義人が異なるケース、あるいは親が子供のために、あるいはその逆で、便宜的に名義を貸している場合に発生します。名義人は、賃貸借契約に基づいて、部屋を善良な管理者の注意をもって使用する「善管注意義務」を負っています。したがって、たとえ名義人自身がそこに住んでいなかったとしても、居住者が部屋をゴミ屋敷にして建物を毀損させた場合、大家に対する損害賠償責任を負うのは第一に契約名義人です。ゴミから漏れ出した水分が床下まで浸透し、基礎や構造体を腐食させた場合、その修繕費用は数百万円に達することもあります。また、悪臭や害虫が原因で他の住人が退去してしまった場合の損害、いわゆる「賃料減収補填」も請求されるリスクがあります。名義人は、自分の知らないところで積み上がったゴミの山に対して、法的な支払い義務という形で責任を取らされることになるのです。さらに、ゴミ屋敷化した状態で放置されたまま、契約期間が満了したり、更新時期が来たりした際、名義人は「原状回復」という巨大な壁に突き当たります。自力で片付けられない居住者に代わって、名義人が専門業者を手配し、高額な清掃費用を立て替えなければならない状況は、まさに経済的な二次被害と言えるでしょう。このような事態を防ぐためには、自分が名義人となっている賃貸物件の現状を、プライバシーに配慮しつつも定期的に把握しておく必要があります。特に高齢の親や、精神的に不安定な親族のために名義を貸している場合は、その優しさが仇となって、自身の生活基盤を揺るがすほどの負債を背負い込む可能性があることを自覚しなければなりません。賃貸契約の名義を持つということは、その空間の「最後」を看取る責任を持つということです。ゴミ屋敷化の兆候、例えばベランダにゴミが溢れている、換気扇から異臭がするといったサインを大家や管理会社から告げられた際、名義人は直ちに介入し、強制的にでも清掃を行わせる法的・道義的な立場にあるのです。