マンションに住んでいると避けては通れないのが、一年に一度あるいは数年に一度巡ってくる排水管の一斉清掃作業である。掲示板に貼られた予定表を見て、自分の部屋の番号を確認した瞬間に、心臓が跳ね上がるような思いをする人は少なくない。なぜなら、その部屋が他人に見せられる状態ではない、いわゆる汚部屋と化している場合、作業員を室内に入れることは、プライバシーの侵害を通り越して一種の公開処刑に近い恐怖を伴うからである。排水管清掃は、キッチン、洗面所、浴室、そして洗濯機置き場の排水口から高圧洗浄ノズルを差し込み、配管内部の汚れを削ぎ落とす作業である。つまり、部屋の中の主要な水回りすべてに作業員が立ち入ることを意味する。足の踏み場もないほどに物が散乱し、脱ぎ捨てた衣類やコンビニの空き殻が床を埋め尽くしている状態では、作業員が歩くスペースすら確保できず、作業そのものが不可能になってしまう。多くの人が「部屋が汚いから」という理由でこの清掃を欠席しようと考えるが、それは極めて危険な選択である。マンションの排水管は縦一列で繋がっているため、一軒でも清掃を怠れば、そこが詰まりの原因となって階下への漏水事故を引き起こす可能性がある。まず、完璧に綺麗にしようという理想を捨てることから始めるべきである。作業員が必要としているのは、あくまで「水回りへの動線」と「作業スペース」だけである。玄関から各排水口までの通り道を、幅五十センチメートルほど確保する。そして、排水口の周囲一メートルにある荷物を、一時的にクローゼットや作業に関係のない寝室、あるいはベランダへ押し込む。見栄を張る必要はない。作業員は数多くの家庭を見てきたプロであり、生活感のある部屋には慣れている。彼らが求めているのは、滞りなく作業を終えて次の現場へ向かうことだけなのだ。当日までにゴミ袋を十個用意し、明らかなゴミから順に捨てていく。床が見える面積を少しずつ広げていく。この排水管清掃という強制的なイベントは、自力ではどうしようもなかった汚部屋をリセットするための、天から与えられたチャンスだと捉え直してみてはどうだろうか。
マンション排水管清掃に備える汚部屋脱出計画