我々特殊清掃員がゴミ屋敷の現場に足を踏み入れるとき、最も緊張が走るのは、扉の隙間からネズミが逃げ出すのを目撃した瞬間です。ある凄惨な現場では、玄関のゴミの山を少し動かしただけで、十数匹のドブネズミが一斉に四方八方へと散っていきました。あの不気味な鳴き声と、脂ぎった体毛が擦れ合う感触は、何度経験しても慣れるものではありません。インタビューでよく聞かれるのですが、ゴミ屋敷とネズミの関係は、単に汚いから集まるというレベルを超えています。ネズミはゴミの山の中にトンネルを掘り、そこを拠点に巨大なコロニーを形成します。段ボールや衣類、プラスチックの破片を巧みに組み合わせて作られた巣は、まるで一つの要塞のようです。ある現場では、キッチンのシンク下のゴミの中から、ネズミが蓄えた大量の食べ残しと、数世代にわたるネズミの死骸が重なり合って発見されました。住人の方はその真上で生活していたわけですが、ネズミの存在を認めようとしないか、あるいは恐怖で感覚が麻痺してしまっているケースがほとんどです。作業中に最も厄介なのは、ネズミによる破壊工作です。彼らは前歯を研ぐためにあらゆるものを齧りますが、特に電気コードや通信ケーブルが狙われることが多く、それが原因で漏電や火災が発生しかかっている場面に何度も遭遇しました。また、ネズミの死骸から発生する腐敗臭は、生ゴミの臭いとはまた別の、胸が締め付けられるような強烈な悪臭を放ちます。我々は防護服に身を包み、ゴーグルと高性能マスクを着用して作業を行いますが、それでもネズミの糞尿が乾燥して舞い上がる粉塵には細心の注意を払います。プロの現場では、単にゴミを捨てるだけでなく、ネズミによって汚染された床や壁を特殊な薬剤で洗浄し、オゾン脱臭機で空気そのものを浄化しなければなりません。ゴミ屋敷の清掃は、まさに人間とネズミの陣取り合戦のようなものです。すべてのゴミを排出し、ネズミの隠れ場所を奪い去ったとき、初めてその部屋には人間らしい静寂が戻ります。我々が運び出すのはゴミだけではなく、ネズミがもたらした不潔と恐怖という名の呪縛なのです。その一拭き一拭きが、住人の止まっていた時間を動かし、再び前を向くための土台になると信じて、我々は今日も過酷な現場に向き合っています。