両親が亡くなった後、遺された実家がゴミ屋敷であった場合、それは子供にとって相続という名の「巨大な負債」となる。相続が発生した瞬間から、名義人はそのゴミの山を管理する一切の責任を負うことになる。自治体からの是正命令や、近隣住民からの損害賠償請求は、すべて相続人に向けられる。もし、ゴミの処分費用や建物の解体費用が、土地の売却価格を上回ってしまう「資産価値のマイナス」が生じている場合、相続すること自体が自身の生活を破綻させる原因になりかねない。このような悲劇を回避するためには、三ヶ月以内に「相続放棄」という選択肢を検討する必要があるが、相続放棄をしたからといって、管理責任から直ちに逃れられるわけではない。民法上、次の管理者が引き継ぐまでは、相続放棄者であっても一定の管理義務が残るため、結局は弁護士を通じて相続財産管理人の選任を行うなど、煩雑で高額な手続きが必要となる。理想的なのは、両親が存命のうちに「生前整理」を完了させることである。ゴミのない状態であれば、不動産を円滑に売却し、両親の介護費用や施設入所資金に充てることができる。また、空き家対策特別措置法などの改正により、放置されたゴミ屋敷は固定資産税の優遇措置を剥奪され、税金が数倍に跳ね上がるリスクも高まっている。名義が親のままであっても、実質的な管理責任を問われる現代において、ゴミ屋敷を放置することは、自分の将来の資産を自らドブに捨てる行為に等しい。プロの清掃業者に依頼し、早めに不用品を一掃することは、単なる掃除ではなく、将来発生する不確定な法的リスクと経済的損失を最小限に抑えるための、高度な資産防衛術である。それは、法と福祉が連携して一人の人間を救い出すための、最前線の現場であるべきだ。ゴミ屋敷という負の遺産を、価値ある正の資産、あるいは少なくとも「ゼロの状態」に戻すこと。それが、残される子供たちが自分たちの生活と未来を守るために、今すぐに着手すべき、最も重要な経済的決断なのである。
負の遺産としてのゴミ屋敷相続を回避