ゴミ屋敷の片付けは、壮大な山脈に、たった一人で挑むようなものです。そのあまりの険しさに、最初の一歩を踏み出すことすら、億劫に感じてしまうかもしれません。しかし、どんなに高い山でも、その登頂は、小さな一歩から始まります。ここでは、心が折れずに、片付けをスタートさせるための、心理的なコツをご紹介します。まず、完璧を目指すのをやめましょう。「部屋全体をピカピカにする」というゴールは、あまりにも遠すぎて、心を挫きます。最初の目標は、「今日は、この段ボール一箱分だけ片付ける」「タイマーを15分セットして、その間だけやる」といった、ハードルを極限まで下げた、ごくごく小さなもので構いません。そして、その小さな目標を達成できたら、たとえ余力があっても、その日はそこで作業を終えるのです。そして、頑張った自分を、心から褒めてあげてください。「よくやった」「すごいぞ、自分」。この「小さな成功体験」と「自己肯定」の積み重ねが、継続のための、何よりのガソリンとなります。次に、片付けを「楽しいイベント」に変えてしまう工夫も有効です。好きな音楽を大音量でかけながら、ノリノリで作業する。片付けが終わった後のご褒美として、少し高級なスイーツを用意しておく。綺麗になったスペースに、お気に入りの雑貨や、一輪の花を飾ってみる。こうした「楽しみ」の要素が、辛い作業を、少しだけ明るいものに変えてくれます。また、片付け前後の写真を撮っておくことも、非常にお勧めです。作業に行き詰まった時、ビフォーの写真と、少しでも片付いた現在の写真を見比べれば、「ちゃんと前に進んでいる」という事実が、視覚的に確認でき、新たな勇気を与えてくれるでしょう。ゴミ屋敷の片付けは、自分自身との対話のプロセスです。焦らず、自分のペースで、そして何よりも、自分に優しくあること。その心の持ち方こそが、長い道のりを最後まで歩き抜くための、最も大切な装備なのです。