現代社会において、ゴミ屋敷は決して高齢者だけの問題ではなく、二十代から三十代という若年層の間でも深刻な広がりを見せています。かつてのイメージでは、ゴミ屋敷といえば孤独な老人が陥るものと考えられがちでしたが、近年ではバリバリと働く現役世代の単身者、特に都心部のマンションに住む若者が、気づかぬうちに部屋をゴミの山にしてしまうケースが急増しています。この現象の背景には、過酷な労働環境による精神的な疲労や、スマートフォンの普及による人間関係の希薄化が深く関わっています。毎日遅くまで仕事に追われ、帰宅すれば泥のように眠るだけの生活を送る中で、食事はすべてコンビニや宅配で済ませ、その容器を捨てるという最低限の家事さえも後回しにする。この小さな後回しが積み重なることで、次第に床が見えなくなり、一度秩序が崩壊すると「どこから手をつけていいか分からない」という無力感に襲われ、最終的にセルフネグレクトに近い状態へと陥ってしまうのです。若年層のゴミ屋敷化の大きな特徴は、外見からは全くその予兆が分からない点にあります。会社では清潔感のある服装で、有能な社員として振る舞っている人物が、一歩自宅に入ればゴミの中に横たわっているという二重生活を送っていることが少なくありません。これは、周囲に助けを求めることが「恥」であると感じ、自尊心を保とうとするあまりに孤立を深めてしまうためです。また、この年齢層ではADHDなどの発達障害の特性が大人になってから表面化し、優先順位を立てて片付けることが困難になるケースも多く見られます。二十代や三十代でのゴミ屋敷化は、将来的なライフプラン、例えば結婚や転職、友人との交流を著しく制限し、さらなる精神的な病を招く引き金となります。早期の解決には、本人が自分の状態を病理的なものとして客観的に捉え、専門の清掃業者やカウンセラーに頼る勇気を持つことが不可欠です。若さゆえに「まだやり直せる」という過信が事態を悪化させることも多いため、周囲のわずかな変化、例えば郵便物が溜まっている、あるいは洗濯物の生乾きの臭いがするなどといったサインに、友人や同僚が気づき、優しく手を差し伸べることが、彼らを負の連鎖から救い出す唯一の道となるのです。